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E.クラプトン

 面白い仕事をしました。E.クラプトンのプレスパーティでギターを弾いてきたのです!

 今回の「E.クラプトン・ジャパンツアー99」は全国14カ所で行われたそうですが、毎回コンサート本番前にプレスパーティがあって、DJトークがあり、クラプトンの曲を聞いて、飲んで、食べて・・コンサートを聞くといった趣向です。

 このパーティーを仕切っている会社から電話があり、「直居さんこのパーティでソロのジャズギター演奏してくれませんか。きっと格好いいと思いますが・・。ミュージシャンも時々来ますし、その後VIP席で本番見て下さい。」との依頼があったのです。

 もちろん即座に「やります!」と答えたのですが、その後じわじわと不安みたいな感覚も起こってきました。
 つまり・・クラプトンやメンバーのスティーブ・ガッド、ネイサン・イーストなどがもし見に(聴きに)きたらどう思うのかな・・彼らは毎日演奏している曲を変な風に演奏したら失礼だし・・でもオレがやるんだから完全コピーじゃなく、オレ風な演奏にしたいし・・みたいな不安です。

 クラプトンのことは70年代のクリームのころから良く聞いていて、当時はブルースギタリストといった感じではなく、ハードロック・ギタリストという見方をしていたように思います。エレキの機能を駆使した早弾きや超絶技巧を売り物にしたギタリストだったのです。ジミー・ページ、ジミ・ヘンドリックスなどと同じ系列だと思って、コピーや勉強をしていました。ストラトでディストーションのかかったサウンドは、いくらブルーノートで弾いてもブルースには聞こえず、当時のボクにはやはりBBキングのクリーンなハンバッキングサウンドがブルースに聞こえたのです。
 その後、ポップなヒットを飛ばした頃から、「おや!クラプトンてブルースっぽいな!」と感じ始めました。それと、曲の作り方が何ともいいのです。心地いいコード進行や、メロディーの処理が粋なんですね!
 ・・といった感じでクラプトンは、存在がずっと気になっていたミュージシャンなのです。

 11月26日午後、複雑な想いを抱きつつ武道館へ向かいました。武道館の地下にレストラン「武道」というところがあります。ここは普段いかにも食堂といった雰囲気で、僕たちが出演するとき、リハーサルと本番の合間にハンバーグ定食を食べにゆく・・といったレストランです。ここが階段からすでにブラックライトで照明され、いかにも地下倉庫という雰囲気に作られていてすごくヒップな場所に変身していました。簡単なステージと、DJブースもあって格好いい!

 パーティはVIPとして招待されているプレス関係者でいっぱいです。そんな中ブルージーな曲を適当に選んで20分ほど演奏。けっこうお客さんは熱心に見てくれる。拍手もあり、ボクものって気持ちよく演奏できました。
 その後、DJがクラプトンの代表曲を次々に紹介し、その偉大な足跡をたどる中、「ワンダフル・トゥナイト」「ティアズ・イン・ヘブン」の二曲をソロギターで演奏しました。拍手が一段と大きい!
 この仕事は僕自身も楽しく、お客さんも熱心に聞いてくれて大変うまくいったのですが、結局クラプトンやバンドのメンバーは現れず、大変残念でした。特にドラムのスティーブ・ガッドは昔デーブ・グルーシンと来たときに顔見知りになったのですが会えなかったのです。

 その後、VIP席でコンサートを見ました。ボクと同じ年のクラプトンは元気です!2時間弾きっぱなし。ブルースギタリストの面目躍如!
もしかしたらクラプトンより巧くて、指の動くギタリストはたくさんいるでしょう。クラプトンより歌のうまい歌手もたくさんいるでしょう。でも何故彼はスーパースターなのか・・?この謎を解くヒントがこの2時間の中にあったような気がします。(回答は企業秘密なので教えない!)
 それと、スティーブとネーサンのリズムセクションは凄い!8ビートのグルーブが天下一品、世界最高、前代未聞、唯一無比、老若男女、愛人歓喜(?!?!)。このグルーブ、スイング感を経験出来たのも大収穫でした。

 ・・というわけで、興奮しつつ帰路についたのでした。