いろんな話
(楽屋話やまじめな話など)
あんびえんすギターの話楽屋話
音楽の作り方・・音楽の聴き方・・

 今日はちょっと堅い話し・・といってもそんなにしゃちほこばって読む必要はありません。ミュージシャンの独り言です。

 ボクが中学生の頃、アート・ブレーキーのジャズメッセンジャーズというバンドを聴いて、「なんて格好いいんだ!」と感動しました。でもそのころはジャズが何なのか、何がいいのか全く解っていず、単純に格好いいと感じたのです。
 その後プロになってからは、この「格好良さ」を分析し、練習と勉強でなんとか自分も格好いいプレイをしたい思いで数十年経っています。この数十年の勉強が生み出す物は、当然プラスに働いていると信じているのですが、時にはそれが聴衆に伝わっているかどうか不安になる時があります。演奏者と聴衆の間に存在するある種のギャップについてここで論じる気はありませんが、ボクたちが何を考えながら演奏しているか少し書いてみたいと思います。

 ジャズ・・と一口にいっても色んな種類があります。ちょっと年輩の(失礼!)ジャズファンにとっては、青春時代が蘇るようなジャズが好みかもしれません。またあるファンにとっては生きている証を刻むような気持ちで、前衛ジャズを聴くかもしれません。
 ミュージシャンもそうですが、聴く方も千差万別ですね。そんな中で、ボクの場合どんなところに立っているかというと・・う〜ん、守るべき伝統芸能をやっているのではなく、現代の音楽、しかも誰かの真似でなく自分の音がする、さらに願わくば創造的な感じがほしいな〜と漠然としたところで試行錯誤しています。

 ジャズはすでに伝統ある音楽ですので、定形化した様式があって、たとえば何かスタンダードの曲を演奏するときは、ああいって、こういって、終わり方はこうしよう・・みたいな合意が事前にみんなの中で出来ちゃってます。
 だからといって何十回とその曲をお決まりにやるとボクの場合飽きちゃうんです。でもこの飽きちゃうセンスがミュージシャンには必要だと信じています。同じ事を続けてると飽きちゃうから、違うことをやってみたくなる・・。これが新しいサウンドを作るのだと思います。定形化した様式をわざとはずす・・これがジャズを演奏する醍醐味だと思っています。お客さんも、一緒に演奏しているミュージシャンも次の瞬間を予測している部分があるのですが、それを裏切ることで新鮮な印象を作り出すことができます。(もちろんハズす場合もある!けどね)なぁ〜じゅにて
[Nage] 櫻井郁雄(b) 直居(g) マーク・デローズ(dr)

 こういった気持ちでプレイしていると、一緒に演奏しているミュージシャンと音楽を通じてお話をしているような状態になります。時には喧嘩にもなるし、時には全く話しが通じないで孤立するときもあります。でも話しがよく通じてみんなで同じ方向を向き、うまくいったときの興奮、快感、スリルは何物にも代え難いのです。こんな瞬間「おれって格好いい!」と悦楽の時をむかえることができます。

 一方聴く方はというと、当然のことながらミュージシャンと同じレベルの知識を持つ必要はありません。コード進行、ハーモニーの構造、リズムの質、スケールなどのデティールを気にしていたらちっとも楽しくありませんよね!
 そこで、音楽的知識はおいといて、バンドの中の人間関係について観察しながら聴いてみてはどうでしょう。きっと面白い発見がありますよ。
 ドラムがこっちへ行こうと誘っているのに、ベースはちっとも乗って行かず、別の方向を目指してるな〜、とかピアノとサックスはまるで愛し合っているように同じ方向を向いているとか・・今までとは違う世界へ入っていけます。新しい快感が待っていますよ。(決してアブナイ世界ではありません...)

 これはミュージシャンのわがままかもしれませんが、皆さん、昔のレコードの名演の再現を求めないで、スリル満点「今」の音楽の創造に参加しましょう!

 ビールと音楽は「生」に限る!!!


 ......って直居さん、下戸ですよね。(by 管理人)