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ビータの話 その3

 トランペットのHさんの話。
 バンドリーダーのHさんは音楽に関してはすごくセンシティブなんだけれども、音楽以外のことは全くいい加減というか、人任せなんです。
 その日もHさんは自分がどこへ行くのか知りませんでした。マネージャーに言われるまま電車に乗っただけだったのです.....。

 Hさんはバンドでただ一人タバコを吸わないので、その日も一人だけ禁煙車に乗り東京駅を出発しました。目的地の少し手前でマネージャー氏がHさんの様子を見に行くと、網棚に楽器ケースはないし、後ろから見ると席には誰もいないように見えます。マネージャー氏は「あぁ、Hさんは降りるためにもうデッキに行ったんだ」と思い、自分の席に戻りました。

 目的地に着き、ホームに降り立ったメンバーは禁煙車の方向からHさんが来るものと待ちました。ところが待てど暮らせどHさんは来ません。
 「おかしいなぁ...。席には楽器も無かったし...。乗ったのは間違いないハズなんだけど....。」と考え込むマネージャー氏の前を電車が動き出しました。

 ふと見ると動く電車の中に大事そうに楽器を抱えて眠り込んでいるHさんがいましたとさ。

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