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2000年 カリフォルニアツアー珍道中顛末記--前編--

昨年に引き続きまたまたアメリカ珍道中へ行ってきました。
今回はカリフォルニア。ジョン・ネプチューンと二人で最新アルバム「SHAKUHACHI MELLOW JAZZ」の販売とプロモーションツアーというわけです。

2月16日
 サンフランシスコへ到着。ダラーレンタカーにてダッジを借りる。北へ向かい4時間、ワインで有名なナパバレーを通り(ジョンもボクもほとんど酒は飲まないのであっさりと素通り)、ウィリッツ(Willits)という小さな田舎町へ。
 ウィリッツにはMonty Levensonというジョンの友達がいて尺八を作っています。モンティーはインターネット(www.shakuhachi.com )を通じ世界中から注文を受けているのですが、その尽力によりウィリッツには沢山の尺八プレーヤーがいて、マーチングバンドが作れるほどだそうで、日本人のボクには信じられないようなことが起こっています。
 モンティーはボクと同じ年で60年代ヒッピーとしてニューヨーク(ブルックリン!)から西海岸へやってきて、色々なことをやりながら今のところに落ち着いたそうです。反戦、公民権運動、環境問題などずっと変わらない考え方を持ち続けている大変興味深い男です。彼は今住んでいる家も完全に自分で作り、電気も水力と太陽発電で完全にまかなっているとのことです。(電力会社から電気を買わないことをオフ・グリッドというそうです)

Monty's House
モンティーが自分で作った家
Monty's Track
モンティーのトラック。50年代のモノで今でも現役!

 数日間ここにお世話になりつつ、時差を調整したり2回のリハーサルをしたり、高校のバスケットボールの試合を見たりして過ごし、すっかりリラックスしてしまいました。
 コンサート本番は、モンティーの娘が通う高校の講堂で300人ほどの観客を集め行われました。ボクとジョンの他にローカルのピアノトリオとモンティーがパーカッションとして参加。ローカルのミュージシャン達は完全にプロというわけではなく、別の仕事をやりながら時々音楽の仕事をする・・といった人たちなのですが、みんななかなかの腕前で特にピアノ(Richard Cooper)はかなりの経験もあり、凄いピアニストでした。
 コンサートは熱狂的に支持され、大成功のうちに終了し、ミュージシャン達もハイになっていて夜中まで楽しく音楽を語り合いウィリッツでの最後の夜が過ぎていきました。

4mens
左からRichard(pf) Naoi(g)John(Shakuhachi)
Monty(perc)
Les&Naoi
ウィリッツにてボクとベースのレス。彼は最初から「グルーブ!グルーブ!」と叫んでいた。メチャいい奴。

2月20日
 朝ウィリッツを出発猛雨の中(寒かった!)ベイエリアのバークレーへ4時間のドライブ。フリーウエーのドライブも幾分慣れて来たのですが、何しろ凄い雨。交通量も多いので予定よりも遅れてバークレーへ到着。バークレーは昔の学生運動の中心だったところでボクも72年に1週間ほど滞在したことがあります。当時は沢山のヒッピーがいて、町中が「ラブ・アンド・ピース」といった雰囲気でしたが、今はお洒落な学生の街になっています。 ここでは、シャーリー・ムラモトという女性の琴奏者の「紫アンサンブル」が行うコンサートにボクとジョンがゲストとして4曲参加することなっていたようです。(よく状況がわかっていない!)

 シャーリーは日系3世か4世(どちらにしても大きな差はありません)要するに完全にアメリカ人ということで、彼女のバンドはジャズ、ポップス、民族音楽的な曲をレパートリーとしていて、ジョンとも親交が深く、目指している音楽も共通性があるのです。編成は琴、フルート、ギター、ベース、そして中近東風パーカッションです。ギタリストのジェフ(Jeff Masanari)とは1曲リハーサルを行っただけですぐに友達になりました。
 彼はボストンのバークリーの卒業生で、基本的にジャズ・ギタリストであり、しかもボクとは目指しいるスタイルや方向性がとても似ているので実に簡単にお互いの考えが理解できるのです。(ミュージシャンってこうところがいいよね!)楽屋でいろんな話をしつつ、お互いのCDを交換するなどして盛り上がりました。

 本番の会場は「ジュリア・モーガン・センター」という古い木造のホールで、メチャカッコいい建物です。キャパは300位、音響もとても綺麗です。ジェフのプレイに驚きつつ、パーカッションのプレイのスピード感に圧倒されつつ、ボクもしたい放題弾きまくってきました。本番後はやはり大いに語り、中華料理屋で夜中過ぎまで盛り上がりました。う〜ん、本番後の宴会は楽しくてやめられまへんな〜。

2月21日
 眠い目をこすりながらサクラメントへ向け出発。天気は素晴らしい!「やっぱりカリフォルニアはこうでなくちゃ!」とか言いながら快調に3時間ほどで到着。
 この日はオフ。CSU Sacramento(California State University Sacramento)の民族音楽の教授(ピーター・セラーズとリチャード・ドレイファスを合わせたような人)に連れられてちょっとおしゃれなレストランでメシ。レセプションの女性がメチャ美人!(嬉しい)その後モーテルにて爆睡・・。(カケシも出来ないほど眠かった)

2月22日
 コンサート当日(また雨)、昼間ジョンがCSUにて特別講義を行った。日本人女子大生を含み10名ほどのクラスに混ざり、ボクも聴講する。ジョンは話が上手で、なかなか面白い。
 コンサートは大学のリサイタルホール(キャパ300位)で行われ、やはりこの学校の先生のタブラ奏者(名前は忘れてしまった)との共演。楽器を持った沢山の学生(CSUには音楽科もある)に熱狂的に受け入れられたようだ。日本人のジャズギタリストとアメリカ人の尺八奏者の組み合わせに興味を持ったみたいだ。そうだよね、やっぱり変な組み合わせだよね〜。

2月23日
 サンフランシスコへ向けドライブ。今日は抜群にいい天気だ。こんな日は元気になる!
 途中リバモアというところを偶然通りました。この街は以前テレビで見たことがあったのですが、風力発電で有名な場所だったのです。そんなこととは知らず、フリーウェイを快調に飛ばしていたら遠くの丘に何だかUFOみたいな変なものが見えてきたのです。道路はどんどんそちらへ近づいて、ついにその真ん中を突っ切る形になりました。巨大な風車が何百何千と建っています!牛がのんびりと草を食べている丘陵地帯の超ハイテクな風車が電気を作っているのです。現実感のない異様な光景に「やっぱアメリカってすげー!!」の感。


 間もなくレッドウッドという街に到着。ここではマイクやDI(ギターやシンセの信号を直接ミキサーコンソールへ送るための箱状の機械)で有名な「カントリーマン」を訪ねる。ジョンが尺八などのコンタクトマイクについての相談をするためアポをとっていたのです。地図を見ながら到着するとそこは家内手工業的な本当にちっちゃい町工場で意外。社長のミスター・カントリーマン(本名!)さんは熱っぽく色々なことを教えてくれて、ボクも勉強になりました。countryman
ジョンとカントリーマン。
工場は企業秘密の為、写真を撮ることはできなかった。


john&naoi
パシフィカのSさんの家の前でボクとジョン。
後ろは50センチ程で断崖絶壁!!
 レッドウッドからサンフランシスコは1時間半ほど・・パシフィカにあるSさん(ジョンの友達)の家へ・・すっすごい!太平洋の荒波が打ち寄せる断崖にその家は建っている。2年前のエルニーニョの時は数件離れた家が海へ流されてしまったそうだ。Sさんは理論物理だか理論科学だかの研究者でシリコンバレーで会社をやっている。尺八もなかなかの腕前。


その夜、バークレーで知り合ったジェフと待ち合わせ、サンフランシスコの怪しげな場所にある「パール」というジャズクラブへ行く。「パール」ではストレートなジャズを普段からやっていて、ミュージシャンが集まる、とてもいい感じの店です。そこではブラッド・ビューシというギタリストのトリオが出演していてジェフとボクと3人ギター弾きが集まったわけです。ブラッドは古いGUILDのセミアコ、ジェフはやはりかなり古いEPIPHONEのフルアコを使っていて両方ともすごくいい楽器。そして二人ともプレーはバカウマ!ボクもワンセットプレーをしてメチャ受けて、楽しんできました。結局夜中2時すぎまでセッションで盛り上がり、ゴキゲンでした。

ということで、後半へ続く。