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インドの話(3)

 インドの音楽はすごい!リズムがすごい!ものすごいグルーブなのだ。

 ある夜コンサートを聞きに行った。人気バンドらしく会場は満員である。バンドの編成は横笛(名前は忘れた)、バイオリン、タンブーラ、後はパーカッションで主役のマダルガム(両側から叩くタムタム)、タブラ、ガッサム(陶器の壺)、モーシン(インド風ジュースハープ)である。それに主役パーカッションの弟子と思われるボーヤが演奏中にカウント(指揮のようなもの)をとる。これはややこしい譜割のフレーズを叩くときこのボーヤの動きを横目で見ながら自分のいる場所を確認するためで、たいてい弟子のような若者がその任務につくらしい。

 教祖のような風貌の主役のパーカッションは、笛やバイオリンがソロをしている間は比較的おとなしくリズムパターンをやっているが、いったん自分のソロになると形相が変わり、ものすごいシンコペーションとポリリズムの嵐となるのだ。例えば....一拍を五つに分け、それを三つずつのフレーズにして五回やるとそれで三拍になるから....みたいな超ややこしいことを連続して演奏するのだ。客も難解なフレーズが無事解決すると興奮しヤンヤ喝采と相成る。主役はそれに気をよくし、さらにエスカレートしてより難しいことをやる。客の反応に注意してみると、ほとんどの客もカウントをとり、その動きはステージ上のボーヤと同じ動きなのである。な、なんと客のレベルが高い!

 後で聞いたところでは、これらのややこしいフレーズは時には電卓で割り算をして作り、練習するそうである。ややこしいほど解決した瞬間の快感が大きく、客にも受ける。彼らの作り出すグルーブはスピード感があり、本当にスイングしている。客とミュージシャンの一つの理想的関係がここにはあった。

 ....とはいうものの、その日演奏した曲はすべてキーがDであり、スケール(ラーガという)も僕たちにはなじみの少ないため全体に変化に乏しく、サウンド的には必ずしも満足のいくものではなかったのだが、ことリズムに関しては本当にぶっ飛びでありました。

 アフリカへいった時に聞いたドラムアンサンブルのグルーブもすごかったけど、インドのはもっと複雑なリズムであり、その点では間違いなく世界一なのでは?の感を強く持ったのでした。
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